衆議院のHPに入り「宇宙基本法」というキーワードで検索をかけると、1 本会議開会情報(3件)、2 委員会ニュース(3件)、3 委員名簿・法律案経過概要(3件)、4 会議録(17件)、5 議案(7件)、6 質問答弁(8件)、7 衆議院公報(29件)、8 衆議院の案内(3件)という具合にこの法律について過去に色々審議されてきたことが伺える。少なくとも朝日の言うようにたった2時間の審議で可決したということではなさそうだ。
実際宇宙基本法という法案がいかなるものかと調べると、衆議院の第166回国会衆第50号に「宇宙基本法案」なるものがあり、第一章 総則(第一条−第十二条)、第二章 基本的施策(第十三条−第二十三条)、第三章 宇宙基本計画(第二十四条)、第四章 宇宙開発戦略本部(第二十五条−第三十四条)、第五章 宇宙活動に関する法制の整備(第三十五条)からなる法律だ。
wikiでは【宇宙基本法案(うちゅうきほんほうあん)とは、日本において、宇宙開発・利用の基本的枠組みを定めるための法律として検討されている法案をいう。2007年6月20日、与党プロジェクトチーム座長の額賀福志郎衆議院議員ほかにより、衆議院に議員立法の法案として提出された。第166回国会(常会)に提出。内容は、内閣に宇宙開発戦略本部を設け、宇宙開発の推進にかかる基本的な方針、宇宙開発にあたって総合的・計画的に実施すべき施策を宇宙基本計画として策定することが挙げられる。宇宙開発戦略本部の本部長は内閣総理大臣であり、副本部長として、内閣官房長官および宇宙開発担当大臣が宛てられることとなる。情報収集衛星の打ち上げ運用の開始などの情勢の変化を受け、それまでに1969年国会決議により、軍事以外の目的(「平和の目的」)に限定されていた宇宙開発・利用の制限を明示に緩和し、防衛目的であって侵略目的ではないなどの一定の場合には問題ないことを明確にすることが目的の1つとしてある(但し、全ての軍備は“防衛”目的で存在しており、“侵略”を目的に謳う国などおよそあり得ない事から、言い訳に過ぎないとの見方もある。ダブルスピーク参照)。宇宙基本法案は14条で、国に対し、国際社会の平和・安全の確保、我が国の安全保障に資する宇宙開発を推進するために必要な施策を講ずることを命じている。】となっており、要は1969年の国会決議があまりにも旧態依然としているので昨今の国際情勢に鑑みて法律を改正したものらしい。
この法律を読むと
(目的)
第一条 この法律は、科学技術の進展その他の内外の諸情勢の変化に伴い、宇宙の開発及び利用(以下「宇宙開発」という。)の重要性が増大していることにかんがみ、我が国において宇宙開発の果たす役割を拡大するため、宇宙開発に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国の責務等を明らかにし、並びに宇宙基本計画の作成について定めるとともに、宇宙開発戦略本部を設置すること等により、宇宙開発に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の向上及び経済社会の発展に寄与するとともに、世界の平和及び人類の福祉の向上に貢献することを目的とする。
とされており、さらに(国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障)として
第十四条 国は、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する宇宙開発を推進するため、必要な施策を講ずるものとする。
という文言があるので、素人目には至極妥当な法律のように見える。昨今の周辺諸国の軍事情勢から考えると遅すぎる、という感がするくらいである。
しかし早速この法案に朝日新聞の社説が噛みついている。噛みついてはいるのだが、いかにも歯切れが悪い。朝日新聞はあたかもこの法律ができれば自衛隊が他国に侵略を開始するのではないかと心配しているようである。しかし最近ではその他国なるものが矢鱈に軍事力を増強させ日本に対してミサイルの照準を合わせ、軍事衛星を飛ばし、色々と軍事的な圧力を背景に領土問題等を処理しているのは常識で、ひとり日本だけが永久に丸腰でいなければならないという主張は恐ろしく陳腐な話である。それとも日本を永久に他国の侵略に備えない丸腰国家としておきたいのだろうか?いま一つ理解に苦しむ。
日本の宇宙基本法案を批判するのであれば、他国の宇宙の軍事利用にも大反対の姿勢を明確に示さないと、どうにも収まりが悪いと思ふのだった。
宇宙基本法―あまりに安易な大転換 朝日新聞08年5月10日社説
【宇宙の軍事利用に積極的に道を開く宇宙基本法案が、衆院の内閣委員会で可決された。ねじれ国会の中、自民、公明の与党に民主党も加わった議員立法で、今国会で成立する見通しだ。
法案は宇宙開発の目的として「我が国の安全保障に資する」との文言を盛り込んだ。「平和の目的」に限るとした1969年の国会決議を棚上げし、宇宙政策の原則を大転換させるものである。
約40年前の国会決議のころとは宇宙をめぐる事情は様変わりした。多くの国が軍事衛星を打ち上げている。自衛隊も事実上の偵察衛星である情報収集衛星をすでに使っている。核とミサイルの開発を進める北朝鮮の動向を探るためなら、宇宙から情報を得ることに多くの国民が理解を示すだろう。
それでも、国会決議は自衛隊の衛星利用に一定の制約になってきた。政府は情報収集衛星を自衛隊に持たせず、内閣府の管轄にしてきた。情報収集衛星の解像能力も、民間で一般的な水準に抑えられてきた。
今回の基本法は、現状を追認するばかりでなく、そうした制約も取り除いてしまおうというものだ。
ところが、そうすることによる国家としての得失はどうか、自衛隊の活動にどんな歯止めをかけるのか、といった論議は抜け落ちたままだ。しかも、たった2時間の審議で可決するとは、どういうことか。あまりに安易で拙速な動きである。
基本法が成立すれば、自衛隊が直接衛星を持ち、衛星の能力を一気に高める道が開ける。それにとどまらず、将来のミサイル防衛に必要な早期警戒衛星を独自に持つことができたり、様々な軍事目的での宇宙空間の利用が可能になったりする。
だが、内閣委員会で、提案者の議員は具体的な歯止めについて「憲法の平和主義の理念にのっとり」という法案の文言を引いて、専守防衛の枠内であるという説明を繰り返しただけだ。
基本法の背景には、日本の宇宙産業を活性化したいという経済界の意向もある。衰退気味の民生部門に代わり、安定的な「官需」が欲しいのだ。
だが、宇宙の軍事利用は、日本という国のありようが問われる重大な問題である。
衛星による偵察能力の強化は抑止力の向上につながるという議論もあるだろうが、日本が新たな軍事利用に乗り出すことは周辺の国々との緊張を高めないか。巨額の開発、配備コストをどうまかなうのか。宇宙開発が機密のベールに覆われないか。そうしたことを複合的に考える必要がある。
国民の関心が乏しい中で、最大野党の民主党が法案の共同提案者になり、真剣な論議の機会が失われているのも危うい。 】

