2008年11月19日

#1985 国籍法一部改正

 国籍法の一部改正について、昨日の午前中に開催された法務委員会をネットのライブ中継で見ていたらこんなやりとりがあった。いずれも法務省の答弁である。

 今般の国籍法の一部改正によって、新たに日本国籍を取得するだろうと考えられる対象者は600人程度と推定しているが、正確に把握していない。

 嫡出子の認定にDNA鑑定を導入しない理由については、現在の認知制度(日本人-日本人)にはDNA鑑定を義務付けてないので今回(日本人-外国人)の場合にのみ、DNA鑑定を要求するのは差別となる恐れがある。そして、DNA鑑定にはピンからキリまであって、どのレベルを採用するのかで結果が変わってくる。また、検体がすり代えられたかどうかを判断する術を単なる行政府である法務省は持ち合わせていないので困難である。

 日本国内で生まれた子については父母が日本人であればその子も当然日本人なのでDNA鑑定は不要で、子には日本国籍が与えられる。しかし日本国外で外国の女性の分娩によって出生した子に婚姻も同居もしていない日本人の父親の申告を根拠に日本国籍を与える、というのはいささか無理があるかもしれない。虚偽申告を防止するためには罰則を強化するだけでなく、最低限DNA鑑定による親子関係の立証が必要だろう。このままこの法が施行されると平沼氏が指摘するように「男性が証拠もなく認知をすると日本国籍が獲得できる、むちゃくちゃな歯止めのない法律だ」というのも尤もだ。

 当局の 「DNA鑑定にはピンからキリまであって、どのレベルを採用するのかで結果が変わってくる。」という答弁にはいささか首を傾げた。DNAによる親子関係鑑定は親子であると断定するためには困難が伴うが、親子関係がないと立証するのはそんなに難しいことではない。虚偽申告防止のためには極めて有効な手段だ。法務省にその機関がないからDNA鑑定をしない、出来ないというのは言い訳に過ぎず、法の施行にあわせて然るべき鑑定機関を設立するべきだろう。間に合わなければそれまでは鑑定を外部委託すればいいだけの話である。

 この法案に関してはもう少し時間をかけて審議をするべきだろうと思った。

資料:「国籍確認請求事件」最高裁判所大法廷平成20年06月04日 判決全文

 国籍法の一部を改正する法律案(内閣提出第9号)の概要

 本案は、出生後日本国民である父に認知された子の日本の国籍の取得に関する国籍法の規定は一部違憲であるとの最高裁判所判決があったことにかんがみ、父母が婚姻をしていない場合における認知された子にも届出による日本の国籍の取得を可能とするとともに、国籍行政の適正な運用を図るために必要な法整備を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりである。

一 届出による国籍取得の要件の見直し
  出生時に日本国民との法律上の実親子関係が存在していないために出生により日本の国籍を取得しなかった子について、父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した場合には届出によって日本の国籍を取得することができるとされている規定を改め、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したとの要件を削除することにより、出生後に日本国民から認知されて日本国民との法律上の実親子関係が生じた場合には、届出によって日本の国籍を取得することができるものとすること。

二 罰則の新設
  一の届出をする場合において、虚偽の届出をした者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処するものとすること。

三 経過措置
  20歳に達するまでに日本国民から認知されたが父母が婚姻していなかった者のうち、一の届出による日本の国籍の取得ができない者等について、所定の要件を満たすときは、施行日から3年以内に限り、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができるものとすること。

四 施行期日
  この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して20日を経過した日から施行するものとすること。

 日本国籍取得要件の改正法案 ネット上に反発、自民にも懸念 11月17日19時25分配信 J-CASTニュース

 日本人と外国人の間に生まれた子どもの日本国籍取得要件を緩和する法案をめぐり、波紋が広がっている。ネット上では「誰でも日本人になれてしまう」と反対運動が噴出。さらに、自民党内にも懸念する声が出始めた。また、二重国籍解禁に向けてのプロジェクトチーム(PT)で座長を務めた河野太郎衆院議員のブログが「炎上」。PTでの議論は今回の改正案とは別件なのだが、おもわぬ「とばっちり」を受けている形だ・・・


 「偽装認知の危険あり」 国籍法改正案に反対の議連結成 2008.11.17 22:14 産経新聞

 未婚の日本人の父と外国人の母の間に生まれ、出生後に認知された子が日本国籍を取得する際、その要件から「婚姻」を外すことを柱とした国籍法改正案に反対する有志議員が17日、「国籍法改正案を検証する会合に賛同する議員の会」(発起人代表・平沼赳夫元経済産業相)を結成した。この改正案は偽装認知による国籍売買を招く恐れがあるとして、18日の衆院法務委員会での採決の延期を求めることを決議した。現行国籍法で、出生後の認知のための要件となっている「父母の婚姻」は、6月に最高裁判決で違憲とされた。このため、政府は改正案を今月4日に閣議決定。自民、民主両党の合意により、18日の衆院本会議で可決される見通しだ。会合には議員本人14人を含む38人が出席。平沼氏が「男性が証拠もなく認知をすると日本国籍が獲得できる、むちゃくちゃな歯止めのない法律だ」と指摘した。出席者からDNA鑑定義務化や偽装認知の罰則強化を求める声が相次いだ。だが、自民党の村田吉隆国対筆頭副委員長は17日の記者会見で「自民党として党内手続きで了承している。(反対論は)トゥー・レイト(遅すぎる)だ」と応じない考えを示した。

 国籍法改正案が衆院で可決、自民一部議員が採決前に退席 11月18日19時43分配信 読売新聞

 日本人と外国人の間に生まれた子供の国籍取得要件から、父母の婚姻を外すことなどを内容とした国籍法改正案は18日の衆院本会議で全会一致で可決、参院に送付された。本会議では自民党の赤池誠章、西川京子、牧原秀樹衆院議員が採決前に退席した。本会議に先立つ衆院法務委員会で、自民党は反対の姿勢を示していた赤池氏を差し替えた。牧原氏ら3議員は「多くの国民が改正案に反対の意思表明をしている。もう少し審議をすべきだ」などと退席の理由を語った。同改正案は、最高裁が6月、日本人と外国人の間の子供の日本国籍取得に親の結婚を要件とした現行国籍法の規定を違憲とする判断を示したことを受けて、政府が今国会に提出した。
posted by あど at 04:21| 青森 雨| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おはようございます。
 この珍妙な法律をなんで作ろうとしているんでしょうね。
 代理母出産の子供に日本の国籍を与えるためなんでしょうか。
 それなら別の方法がありそうなものです。
 前後の見境なくやっつけ仕事で作成したような希ガス。
Posted by 島谷 at 2008年11月19日 05:04
おはようございます。
 最高裁の違憲判決を受けて急遽こしらえた感のある法案ですね。対象者が600人程度だろうという当局の見通しの甘さには吃驚しました。法律が施行されると在外公館には国籍取得の手続きをする長ーい行列が出来るような希ガス。
Posted by あど at 2008年11月19日 05:18
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